CTの有効活用と歯内療法の診断力/レオ先生の自費診療日記
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CT撮影、どれくらい活用していますか?
「保険算定もできるし、必要に応じて撮っている!」という先生方も多いと思います。
スマイルデザインクリニックでも、カウンセリング後に資料どりを希望された方には全員CTを撮り、全顎的な診断に役立てています。
近年、歯科治療におけるCBCTは、欠かせないツールになってきました。特にインプラントなど外科処置の際は、骨の幅や厚み、埋入位置、上顎洞や下顎管の位置確認など、CTは精度の高い診断に必須です。
さらに私の専門である歯内療法においてもCBCTの有効性は絶大です。デンタルX線写真よりも圧倒的に多くの情報が得られ、より正確な診断が可能になることも少なくありません。ただ、状況によって得意、不得意なケースがあるので、何でもかんでもCTに頼ると痛い目を見ることがあるので、今回はそれを報告した論文をベースにして、パターン別にご紹介したいと思います。
<CBCTが役立つケース>
・根管の探索
・根尖性歯周炎の有無の確認
・穿孔の有無、度合い
・歯根吸収の進行度
・歯根水平破折
CTで根管がはっきり見えない場合でも、歯根の外形に対する根管の対称性から、根管の存在を推測することが可能です。
特に上顎前歯や上下大臼歯では、解剖学的構造の影響で、デンタルでは確認しづらい病変も、CTではより確実に捉えられます。ある研究では、デンタルX線がCBCTで検出された病変のわずか63%しか判別できなかったというデータもあります。また両者のオッズ比が2倍違うというシステマティックレビューもあるくらいです。
ただし注意点として、根尖部透過像が必ずしも根尖性歯周炎を示すわけではありません。約42%が炎症とは関連がなく線維性組織であったとする報告もあることから、「CTで検出した病変=根尖性歯周炎」かどうかは他の診査法と合わせた総合的な判断が必要です。
<CBCTでは分かりにくいケース>
・失活歯の垂直歯根破折
・ファイル破折
・側枝の有無
・亀裂の有無
・根管拡大サイズ
歯根破折は周囲の骨欠損の程度で推測できることもありますが、初期の破折や亀裂はCTでも診断は困難です。
例えばファイル破折は、ガッタパーチャポイントのコントラストが強く出るため、破折片と充填材の区別がつきにくいです。私も術前のCTだけを頼りに再根管治療を始めたところ、拡大視野で急に金属片が出てきて、「あれ、これは明らかに破折ファイルやん!」と驚いた経験もあります。
同様に、CTではガッタパーチャポイントが実際より太く見えることがあり、拡大号数を間違えて判断してしまうことも。
これらのように、CTでは確認が難しいケースもあり、撮影しても結局よくわからないということになりかねず、慎重な対応が必要です。
結論、CTは非常に便利なツールですが、必ずしも万能ではありません。常に患者さんにとって「なぜ撮影するのか」という明確な目的を持って使用することが大切です。状況に応じた適切な判断を行いながら、最良の診断を提供して行くことができればいいですね!
参考になりましたら幸いです。