歯髄保存の革新技術『断髄』/レオ先生の自費診療日記

歯髄保存の革新技術『断髄』/レオ先生の自費診療日記



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歯髄に近接する大きなう蝕を治療している時
こんな経験はありませんか?

う蝕を取り切ったら露髄して
そのまま抜髄した結果、後で患者様に
「痛くなかったのにいきなり神経抜かれた…」
と言われてしまった。

逆に患さんに配慮して
あえてう蝕を残して修復したら
「治療してからすごくしみるようになった」
と言われた。

せっかく良かれと思ってした治療に
文句を言われるのは辛いですよね…

これらの問題はどちらも説明不足が原因の一つかもしれませんが、実はここ数年、これらの状況に対する新しい選択肢が注目を集めています。

それは【断髄】です。

断髄はVital Pulp Therapy
(VPT、生活歯髄療法)の一種で
具体的には以下に分類されます。

①シールドレストレーション
②ステップワイズエキスカベーション
③直接覆髄
④部分断髄
⑤歯頸部断髄

かつては

「う蝕が原因で露髄したら抜髄!」

「断髄なんて小児に行うもので
  永久歯に適用するとか有り得ない!」

と私が在籍していた医局でも言われていました。

しかし材料と研究の進歩により
今では歯髄保存が現実的な
選択肢の一つになってきています。

これまで深在性のう蝕により
不可逆性歯髄炎と診断されていたものが
組織学的に見ると実は歯髄の炎症は
歯冠部のみに限局しており、全て歯髄を
取り切らなくても保存できる可能性がある
という報告もなされてきました。

そして歯髄をできる限り保存することで

①歯髄の防御反応の維持
②歯の削除量減少に伴う破折リスクの低下
③根管治療における偶発症の回避
④患者さんの費用、治療回数の削減
⑤より長期間にわたる歯の機能の維持

という利点につながってくるからこそ
このVPTが注目を集めているというわけです。

我が国のう蝕治療ガイドラインでは
深在性う蝕にはステップワイズエキスカベーション(いわゆる暫間的間接覆髄)を推奨しています。

そうするとステップワイズエキスカベーションのような選択的う蝕除去法と、断髄のようなう蝕完全除去法はどちらがいいのか?
となんとなく疑問に感じられるかと思います。

この疑問に対する一つの答えとして
2023年にある論文が報告されました。

その文献では【断髄の方が選択的う蝕除去法よりも優れている】と結論づけていました。

私もなるほどと思いましたが、かつて
象牙質う蝕の研究をしていた身からすると
いくつかの批判的吟味があり、それに関しては今後のセミナーでご紹介できればと思います。

ただこの論文でも紹介されているように
断髄を成功させるためには、しっかり防湿し
清潔な器具や手で操作を行い、歯髄の止血が
確実に行えて、色味も異常でないことを
確認することが重要です。

う蝕をあえて残す不安や、抜髄して
良かったのかなと思う後悔からの解放として
【断髄】という手法、適応症があれば
ぜひトライしてみてください!

最後までご覧いただき有難うございました。
かなりマニアックな内容ですが、皆様の日々の臨床に役立つ情報になりましたら嬉しいです。是非いいね!ボタンを押してください!